神経ブロック

痛みの原因になっている部分、および痛みを伝える神経に局所麻酔薬の注射を行い痛みを抑えるとともにその部分の血流を改善すること等により痛みの連鎖を断ち切り完治へと導く治療法です。

特殊な注射針を使用するため注射時の痛みは軽減されます。

神経ブロックは麻酔専門医の高度な技術を要する注射です。

 

神経ブロック  「知らなかった痛みの話」故兵頭正義著より抜粋

 30年ほど前(昭和30年頃)、私がまだ若い医師だったころの話です。胃の手術を受けた人がいました。手術後2日目くらいに、傷口よりも背中を痛がり、「背中の下に何か固い物がある。とってくれ」としきりに訴えるのです。調べても何もはさまっていませんが、ちょうど胃のうしろにトリガー・ポイント(発痛点)ができ、そこを圧迫すると非常に痛がりました。胃などの内臓から出た痛みの信号は脊髄を通って脳に伝えられますが、同時に体表部にも投射されて、このような関連痛を生じることがあるのです。

 あまり痛がるので、ためしに局所麻酔剤をその場所に注射してみました。痛みはすぐ止まりました。ところが局所麻酔剤は一時的にしか効かないはずなのに、二度と「背中が痛い」とはいいませんでした。たった1回で、痛みが治ってしまった…。当時、大変不思議に思ったものです。

 「神経ブロック療法」は、このメカニズムを利用したものです。簡単に言うと、痛みの局所、あるいはその神経の根元に局所麻酔剤を作用させます。痛みは当然止まるわけですが、薬の作用がなくなった後も痛みは前ほど強く起こりません。

 なぜ注射一本でこのような効果がでてくるのか。痛みがあると交感神経が緊張し、血管の収縮が起こります。すると血液の循環が悪くなり、局所的な代謝異常によって発痛物質が生じてきます。つまり、痛み→血行障害→発痛物質→痛み、という悪循環に陥り、痛みが長引くのです。

 ところが、神経ブロックによって痛みを伝える知覚神経や、血管の収縮にあずかる交感神経を遮断すると、この悪循環の一端が断ち切られ、後は生体がもともと備えている治ろうとする力(自然良能)が働くというわけです。

 先ほどの患者の場合、胃の手術刺激が背中に関連痛を起こし、筋肉のしこりを作って、そこが強い発痛点となっていたわけです。そこで局所の痛みの信号をブロック(遮断)したので、いっぺんに全治したというわけです。